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【中医学Q & A】 陰虚について

♦︎四季養生ヨガを受講されている方からのご質問にお答えしています♦︎

虚熱証の状態について。

陰が少ない状態で短時間で急激に身体を温めたり(酵素風呂)などは陽が増えすぎて逆効果でしょうか?
自律神経を整える為に朝の水シャワーは、血流を良くする為(減っている陰を補うと言う意味)有効でしょうか?

回答の前に大切な注意点

回答の前に、一つ注意をお伝えします。

この四季養生ヨガ講座は診断や治療を目的とするものではありません。

私はご質問で頂いた症状に対してピンポイントでアドバイスをすることはできません。なぜなら、個人が抱える体質は一つだけではなく、多くの場合が複合的・複雑に絡み合い、判断が難しいからです。

中医師、漢方薬剤師は、問診、望診、聞診、切診など多くの診断法を用いて、総合的に原因を推測します。その上で、その人の体質に合ったオーダーメイドの漢方処方、アドバイス、施術を行います。

中医学を民間レベルで学ぶ私たちができることは、病気にならない体作りや一般的な養生法を知り、日々の生活に取り入れることです。既に不調を抱えていて、改善を望む場合は、専門家にアドバイスをもらうことをお勧めします。

虚熱証(陰虚)のおさらい

では、まずは虚熱証(陰虚)のおさらいをしましょう。

虚熱の状態とは、体の陰液(血や必要な津液)が不足することで、倦怠感やほてり、不眠、寝汗、微熱、イライラなど上半身の症状が多く現れることをいいます。

陰(潤すもの)がないことは、熱を冷ますラジエーターが機能してないようなもので、体はいわば空焚き状態。エネルギーが足りない虚弱体質の方、更年期の方に多くみられます。

お風呂と体質

次に、質問内容の「陰が少ない状態で短時間で急激に身体を温めること(酵素風呂)」について考えてみます。

私は酵素風呂がどういうものか詳しくはないのですが、一般的にお風呂に入ることは、体を深部から温め、気血の巡りをよくしてくれます。ただ、お風呂に関して気をつける必要があるとすれば、「温度」と「時間」です。

実証タイプ(エネルギー過多)の方は、お風呂に入ってたくさんの汗をかくことで、体に溜まった冷えや老廃物を出し、スッキリすることができます。

虚証タイプの方(エネルギー不足)が同じように、お風呂に長時間入り汗をたくさんかいた場合、おそらく体を壊してしまうでしょう。

汗はエネルギー

エクササイズをして汗をたくさんかいた後、心地よい疲労感を感じますよね?入浴後にも同じような心地よい疲労感があると思います。その逆に、エクササイズの後にぐったり疲れて動けなくなってしまったり、お風呂上がりに貧血のように目眩や吐き気に襲われ、ひどい場合は卒倒して倒れてしまう…なんて方もいます。

中医学では「気血水」は生命活動を維持する基本物質で、過不足ない状態で滞りなく流れていることが大切と言われます。

その中で、「汗」は体の津液(水)に含まれ、中医学では「10滴の汗は一滴の血」と言われるほど大切なものです。

ヨーガでも「アーサナでかいた汗は拭き取らず、体に擦り込むのが良い」と言われるくらい、一滴も無駄にできない重要な物質、つまり「汗はエネルギー」なんです。

なので、虚証タイプ(エネルギー不足)の方がたくさん汗をかくことは、ただでさえ少ないエネルギーをさらに消耗させることになるので、お風呂に入る場合は、ぬるめの温度で短い時間、じんわり汗をかく程度で上がるのが良いとされます。

虚熱証と水シャワー

二つ目の質問「朝の水シャワーは、陰を補う」ことについてですが、それは「?」です。

ただ言えることは、冷たい水で皮膚を引き締めることは、「肺気を強くする」ということです。洗顔の後など、冷水でキュッと顔を締めると、肌がとてもきれいになると言われますよね。日本でも昔からある「寒風摩擦」も同じです。

五行で学んだ通り、肺と肌(皮膚)は深い関係があります。また皮膚は肉体と外界を隔てる最初の「膜」でもあるので、肺気を強めることは、皮膚を強くするだけでなく、免疫力を上げることにも繋がります。

水シャワーもおそらく同じ考えでしょうが、一つ気になるのは、その時間や頻度です。どのくらい浴びているのか?

インドやスリランカなどで発祥した伝統医学アーユルヴェーダでは、冷水を朝に浴びることを推奨しています。でもそれは陽気の強い暖かい地域なのでOKなのです。

インドに比べて、海に囲まれた島国の日本(陰)において、海産物(陰)をよく食べ、まして冷えやすい女性(陰)の水浴びは、中医学的にはあまりお勧めはできないのが正直なお話。体が冷え過ぎてしまいます。

虚熱(陰虚)体質は、「陰が不足している状態」なので、ほてりや目眩など、陽気過剰のような症状が出やすくなりますが、それは「偽りの熱」による症状です(陰虚火旺)。陽気が過剰なわけでなく、必要な陰液が不足している、ということを理解する必要があります。

例え水浴びで、ほてりや目眩が改善したとしても、それは一時的に陰陽バランスが取れているように感じるだけで、実際は「体を冷やしている」ことに過ぎないでしょう。冷えは万病のもとです。

自分の体質を知る

体の陰液(血や必要な水)が不足している状態で、ホットヨガやハードなエクササイズ、お風呂で大量の汗をかくことは、不足している陰液をさらに放出することです。

また、陽気過剰の症状が、実熱証からくるものか、虚熱証からくるものか、見極めも必要です。※実証は多くなったところの症状が出ますが、虚証は減ったところ・浮いたところ両方の症状が出ます

普段から疲れやすく、肌や髪の毛が乾燥気味の方。手足がほてる方。のぼせやイライラ、不眠、寝汗、目眩などがある方は、血虚や陰虚のサインです。

そして、個人差はありますが、女性は35歳を過ぎたあたりから、基本的には虚証に向かっていることを知ってください。

するべきことは、たくさん汗をかいたり、体を冷やすことではなく、安全な方法で気血をめぐらせること、そして「陰」を補うこと、つまり「補血」が大切です。

既に症状が出ていて辛い場合は、漢方薬剤師さんに相談の上、的確な漢方を処方していただくことをお勧めします。(内治法)

そして、しっかりと弁証論治ができる施術家さんのもとで、体に負担がかからない安全な方法(鍼灸など)で気血を巡らせます。(外治法)

もちろん、それ以前に生活習慣を調えることが大前提。それがこの講座で学ぶ養生法です。

まとめ

巷で言われている健康法が全ての人に当てはまるわけではないことを知ってください。大切なのは、自分の今の状態を知ることです。体の不調は、誰かによって作られたものではなく、自分で作ってきたものです。不調がある場合は、まずは体に声をかけ、無理をさせていたことを謝る気持ちを持ちましょう。

そして思いやりの気持ちで体に目を向けること。

肉体(陰)と精神(陽)、二人三脚で未来へ向かっていけたらいいですね。

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