中医学

【中医学Q & A】暑くて寝られない!夏の夜に足の裏がほてるのはなぜ?

♦︎四季養生ヨガ夏コースにご参加の受講生からのご質問にお答えしています♦︎

注意ポイント

この講座では、個人の特定の症状についての診断は控えさせて頂いております。あらかじめご了承ください。あくまで、中医アドバイザー療法士として「中医学の一般的な考え方」をシェアしますので、参考程度にご覧ください。

【質問】

足の裏が暑くて寝られないのは、ただ夏だからではなく何か体の不調なのでしょうか…。

首の後ろに風をあてるのは良くないのは、生ぬるい扇風機の風も同じですか?

足の裏がほてる

まず、考えられることは2つ。

①「陰虚」

②「冷え」

順番に見ていきましょう。

足の裏がほてる理由① 陰虚による五心煩熱

「五心(ごしん)」とは手、足、そして精神(心)をさします。「煩熱(はんねつ)」とは煩わしい熱感のことです。「五心煩熱」は、手のひらや足の裏がほてったり、精神が落ち着かない状態のことをいいます。

季節的な陰虚

質問者さんの「足の裏がほてる」理由は、もちろん「夏だから」というのもあります。ではなぜ「夏だから」といえるのでしょう。

最近、とても暑い日が続いていて、汗をかく量も増えていると思います。これは体の津液(必要な水)が、汗と一緒にどんどん体の外に出ていっている状態です。

津液は熱を冷ますラジエーターのような役割をしますので、失われれば、体の熱が冷めず、頭がぼーっとしたり、ほてるなどの症状が起きやすくなります。

これは年齢や性別に関わらず、夏場に必要以上の汗をかいたり、水分補給、栄養補給をしっかり行わない場合、誰でも起きる可能性があると考えます。

加齢による陰虚

年齢を考えることも大切で、30代後半以上になると、五臓が衰え、男女ともに陰液といわれる血や津液が不足する傾向にあります。気血津液のバランスが乱れた状態です。とりわけ、命の源である腎の陰液が不足した場合(腎陰虚)、体の乾きや手足のほてり、のぼせなどに加え、頭痛、めまい、耳鳴り、寝汗、健忘、精神不安などが起こることが考えられます。

暑さに加え、加齢で陰虚が進んだ場合、季節や気候に関わらず、虚熱内生(きょねつないせい)といって、偽りの熱が体内に発生しやすくなります。いわゆる「ほてり」や「のぼせ」が代表例です。気(陽)とバランスを取るための血津液(陰)が足りず、陽が体内でまるで過剰の状態になります。注意すべきは、実際は陽は過剰ではなく陰液が不足しているのです。「まるで」と書いたのは、そのためですね。

「虚熱内生」の他に、「陰虚による陽証」や「陰虚火旺」などと言います。体の中がオーバーヒートしている状態です。特に夏は自然界の陽気が旺盛の時期なので、普段から陰虚の方は、体の中で余剰となった陽気と呼応して、これらの症状が強く出ることが考えられます。

夏場の熱中症も、気血両虚、気陰両虚の状態で、起きやすくなると考えられますので、日頃からほてりやのぼせ等を感じている陰虚体質の方は注意が必要です。

足の裏がほてる理由② 冷え

全てつながっているお話ですが、陰虚は当然、体の冷えも引き起こします。

血は単体で流れることはなく、気と手を繋ぎ、心臓のポンプや肺の呼吸(特に吐気)によって、全身を巡りながら体を温めます(陽が陰を動かす)。十分な血があり、その血が巡っていれば、体はあたたかく精神を安定させますが、血虚になると巡りは悪くなり、体は冷えて精神も不安定になると中医学では考えます。

栄養豊富な血という伴侶を失った気は、その性質上、膨れ上がる熱となって体表に集まり、発散して体の外に逃げ出そうとします。それが「ほてり」の症状となって出るわけですが、さて、この時の体内はどうなっているかイメージできるでしょうか。

十分に巡る量のない血は瘀血(おけつ)というドロドロの老廃物となり、体全体が「巡らない体」になっていきます。夏の外湿や内湿で発生した余分な水は浮腫みの原因となる上、温める熱(気)の多くが体表に出払うため、体内の冷えはますます進むことになります。冷えは五臓の働きを弱め、体を「虚」の状態にします。

こうして冷えは悪循環を引き起こし、末端で熱がこもるという状態になります。

こうしたことから、ほてりを感じる方の体は、実は体内に「冷え」がある可能性が非常に高いといえるのです。

首に当てる風

次に、二つ目の質問「首に風を当てること」についてです。

極論を言えば、風は当てない方が良いでしょう。ただ、連日、本当に暑いですので、何もないのは熱中症の危険もあります。扇風機などを上手に活用しましょう。

夏の暑さで毛穴は開いています。直接風を当ててしまうと、風邪(ふうじゃ)はダイレクトに体の中に入ってきます。冷たい風(寒風の邪)だけが体に悪さをするのではなく、熱と合わされば「熱風」となり、湿と合わされた「湿風」、燥と合わされた「燥風」となって体を襲います。風邪が「賊風」といって、五気(五邪)のリーダーと言われるのはそのためです。

ですから、扇風機等を直接体に当てるのではなく、外気の温度とそれほど違わない風をお部屋に循環させたり、「そよ風」程度に感じられるくらいが良いかもしれませんね。就寝時には、可能な限り冷房や扇風機は止めるようにしましょう。

足裏のほてり:養生ポイント

最後に、足の裏のほてりをはじめ、陰虚体質の方の養生ポイントをお伝えします。もちろん陰虚体質の方だけでなく、ほとんどの項目は全ての方が実践できる内容ですので、安心して生活に取り入れてみてください。

  1. 冷たいものを摂らず、温かいものや常温のものをいただく
  2. 冷房にあたりすぎないよう、羽織ものなどで調整する
  3. 巡らせる程度のエクササイズは必要ですが、けして汗をかき過ぎないようにする
  4. 寝る1〜2時間前に、38〜40度ほどのぬるま湯にゆっくり浸かる又は足湯をする
  5. 寝る前に足裏を含めたマッサージやストレッチをする(かっさで擦るのがおすすめ!)
  6. 体の潤いの根本である腎陰の機能を活性化するために、早めの就寝やリラックスする時間をもつ
  7. 補気補陰をする(とりわけ腎肝)
  8. 水分補給は飲み物より、食事(スープ)や果物で摂るようにする
  9. スパイスなどの熱性のもの、および生ものなどの寒性のものは、一時的に控える(陰虚体質の方)
  10. 夏場やほてりの症状が強い時は、必要に応じて体の熱をとる涼性の食べ物をとる(利水効果もあるスイカは夏におすすめ!)
  11. かっさ、カッピング、お灸、漢方オイルなどのセルフケアを有効に使う
  12. 必要に応じて、専門家のもとで定期的な外治法を受けたり、漢方薬を処方してもらう

以上、ご質問の回答とさせていただきます。

連日の猛暑で、同じような症状が出ている方もいらっしゃることと思います。

みなさん、どうぞご自愛下さいね。

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