ヨガニドラで唱えるサンカルパとは
「サンカルパ」は、サンスクリット語で「大願」や「決意」という意味があります。
あなたが人生で達成したいことは何か?
この壮大な”願いの種”がサンカルパです。
ヨガニドラ:サンカルパは人生の舵取り
私たち人間は「自由意志」という力を与えられてこの世に生まれてきます。しかし、その「自由意志」をきちんと使えている人は、どれだけいるでしょう。
人生は選択の連続。日々の生活のあるゆるポイントで、私たちは選択を迫られます。しかしその多くが、「好き/嫌い」「したい/したくない」「快/不快」というエゴに流されていることが、ほとんどです。「自分が選択した」と思っても、実はそこに「選択」はないことがほとんとで、「自動的」であり「反応」でしかないことがほとんどです。
潜在意識に決意の種であるサンカルパを植え、育てることは、自分の中の価値構造を再構築することに繋がります。意識レベルではないところで「選びとるセンス」が磨かれ、「好き/嫌い」「したい/したくない」「快/不快」で動くことがなくなります。目標達成のためにすべきことを選択できる、ということです。
まさにサンカルパは人生の舵取りのような存在といわれているのです。
ヨガニドラはサンカルパを育てるテクニック
雑草のない肥沃な大地は、植物の種がよく育ちます。同じように、考えや心が清らかな状態の時、サンカルパはよく育つと考えられています。
しかし私たちの潜在意識や無意識の領域は、生まれる前から経験をしてきた様々な記憶によって、勘違いや思い込み、トラウマ、癖などがはびこんで、まるで無法地帯。そこにサンカルパを植えたとしても、決意の種は育つことができません。
強い気持ちで「よし、やるぞ!」と決意しても、気づいたら、あれ…?という経験は誰にでもあるもの。それは、十分な深さの潜在意識に決意が植えられていないか、心が乱れている時に種を蒔いてしまったか、その決意を受け取る準備ができていなかったか…。何らかの原因があります。私たちが抱えている恐れや執着は、それほど根強く、根深いのです。
そこで登場するのがヨガニドラのテクニック。
その無法地帯の潜在意識や無意識の領域を、きれいにお掃除していくテクニックです。まるで雑草を取り除いてから種を蒔くように、心を準備し、適切な状態のところにサンカルパを撒きます。やがてそのサンカルパは徐々に成長し、最終的には無意識から意識レベルにまで何度も現れるようになり、私たちの性格や人生にまで変化をもたらすといいます。
心がリラックスしていて、それを受け入れて吸収する準備ができたときが、種蒔きの時。それがまさにヨガニドラ中です。
ヨガニドラでどんなサンカルパを選ぶか
サンカルパは何でも良いのか?というと、実はそうでもありません。伝統的なヨガニドラでは、
サンカルパの目的は「欲望」を生むものであってはならない
としています。
- 〜に勝ちたい
- 〜で一番になりたい
- 〜に合格したい
そのような内容は、裏を返せば、誰かが負けてしまったり、誰かが悲しむことを願ってしまうことになります。
さらに、喫煙や飲酒などの悪い習慣を断つためだけにも使わない、とされています。なぜならサンカルパは、肉体的だけでなく、精神的、感情的にも、人生の全てに影響を与えて変革させるだけのパワーを持っているから。要は、適切なサンカルパを持っていれば、喫煙も飲酒も自動的になくなっていく…というのです。
それほど大きなパワーを秘めたサンカルパ。一度決めた願いは簡単にコロコロと変えてはいけない、といいます。中には生涯かけて同じサンカルパをもつ人もいるくらいです。
だからこそ、伝統的なヨガニドラでは、「本当の目的と意味を理解した時にのみ、サンカルパは作られるべき」としています。サンカルパへの理解が深まるまで待った方が良い、というのです。
ヨガニドラ:サンカルパのワンポイントアドバイス
では、実際のヨガニドラの練習の中で、どんなサンカルパを選べは良いか?悩んでしまう方もいるでしょう。
「もっと軽い気持ちでサンカルパを選びたいんですけど…」
そんな方に、サンカルパのワンポイントアドバイスです。
もし「〇〇に合格する」や「〇〇になる」「〇〇で成功する」というようなサンカルパを選びたいとき、語尾にもう一つ、言葉を加えます。
「それが私のダルマ(定め)であるならば」
伝統的なヴェーダ(インド哲学)の教えでは、結果は私たちが選ぶものではなく、「宇宙の法則によって処理されるもの」といいます。法則が、私たちの行いにふさわしい結果を実らせているだけのことだと。
だからこそ、精一杯の努力の末に願いが叶わなかったとしても、「私の行いの結果は期待はずれだった」とは言えても、「私は失敗した人だ」とは誰も言えないのです。むしろ、その道は自分が行くべき道(ダルマ)ではない、と教えてくれていることかもしれません。
それを受け入れず、もし「自分は結果を選べる人」だと勘違いした場合、期待はずれの結果に自分を責め、周りを責め、運命を責め、苦しい思いに苛まれてしまうかもしれません。
反対に、「全てはギフト」と思えたとき、そこには成功も失敗もなく、自己尊厳と感謝の気持ちを持って、与えられた道(結果)を進んでいくことができるでしょう。
「それが私のダルマ(定め)であるならば」には、そんな意味が含まれています。
今はまだ自分のサンカルパ(願い)が分からない方へ
私のヨガニドラのクラスでは、今はまだ自分のサンカルパが分からない、という方に、「どんな人にでも適応する万能なサンカルパ」を紹介しています。
「私はいつでも私にくつろいでいます」
とても短いシンプルな言葉ですが、全てを包括していて、誰にでも適応できる奥深いサンカルパです。
ヨガの聖典は、私たちの本質は「リラックス」と伝えています。宇宙を支える大いなる存在とつながり、信頼し、どんな状況でも恐れや不安を抱かずに自分自身にくつろいで、いつでもご機嫌な状態でいられること。これが私たちの本来の姿であり、そこに戻っていくサンカルパです。
もし「今はまだ自分の本当の願いが分からない」という方も、安心してヨガニドラのクラスに参加してみて下さいね。